このサイトを立ち上げようと思ったきっかけは、突然のレコード生活のスタートだった。
数十年ぶりにレコードで音楽を聴いて感じたことは、時間がゆったり流れるよう感覚だった。音が出るまでに手間はかかるが、その過程を含めてゆったり流れる時間はとても心地いいものだった。
私は、このように手間をかけてゆったりする時間を「Analog Time」と呼んでみようと思う。レコードで音楽を聴いたり、本のページをめくったり。靴を磨いたり、シャツにアイロンをかけたり。
手間をかける生活は、モノを大切する生活でもある。
Analog Timeを紹介することを通じて、手間を惜しまない生活の楽しさと、モノを大切にすることの大切さを伝えていきたい。そんな想いでこのサイトを始める。
まずはレコード生活の始まり。
2022年秋。
最近流行りのスピーカー内蔵オールインワンのレコードプレーヤーを買おうかなとぼんやり考えていて、そのことを知人に相談した。まだ購入すると決めていたわけではなく、近況報告の一部のようなつもりだった。
しかし、知人はレコードプレーヤーを新しくするタイミングだったようで、今まで使っていたプレーヤーを無料で譲ると言ってきた。
断る理由はない。突然、立派なレコードプレーヤーが我が家にやってくることに。
それまで聞いたことのなかったMICROというブランドだった。レコードを照らす黄色い灯がかっこいい。
もちろんオールインワンではないので、アンプとスピーカーが必要である。
スピーカーはメルカリで昔馴染みのモノを、アンプは真空管に憧れ超小型の新品を購入。安く抑えたがオールインワンよりは高くついた。知人にセッティングを手伝ってもらって設置完了。思いがけず、立派なオーディオセットが完成した。
さらに知人はレコードまでプレゼントしてくれた。しかも3枚。
大好きなビル・エバンスと、名前だけは知っているアート・ペッパーと、全く知らないカール・パーキンス。
さっそく、ジャケットからレコードを出し、知人おすすめの除電ブラシで静電気と埃をとり、針を落とす。そして、ボリュームを上げる。
iPhoneからBluetoothスピーカーというセットになって久しい我が家に、レコードの音楽が流れた。久しぶりに聴くレコードの音は、それぞれの楽器の音が明確で、全体としてはやわらかい音だった。空気が変わったようだった。
立ち上がることも、移動することもなく、指先だけでiPhoneを数回操作すれば音楽が流れる時代である。しかし、そこに過程を楽しむという時間は存在しない。
しかし、レコードには音が出るまで過程があり、冒頭でも書いたようにその過程の手間はなんだか楽しかった。何気なく知人に話したことから、プレーヤーを貰い受ける話になり、現物を取りに行き、一緒に設置し、みんなで聴く。この過程も含めてゆったり楽しいAnalog Time だった。